2010年6月29日火曜日

フリーエネルギーと人類の未来

フリーエネルギーとは、一般に熱力学の法則を無視した永久機関なようなものと捉えられているが、ほとんどのものは低レベルのインチキであると考えて間違いない。
例えば、水を水素と酸素に分解して水素から燃料電池で電気を取り出し、出てくるのがまた水でいくらでもエネルギーを取り出せるとか、磁石を組み合わせると永久機関が作れるとか、基本的に熱力学の第2法則を超えるものが出来たと言われれば、それは99.999%嘘であると考える。

100%としないのは熱力学第2法則自体があくまで経験則であるからであり、また人類は宇宙のすべてを理解しているわけではないからである。しかし、現在この地球上で人類がアクセス出来る技術体系内・・・つまり工学的な意味においては熱力学第2法則は確立された理論であると考えて良いだろう。

話は本題に戻るが、フリーエネルギーとは何だろうか?NETで調べると概ね永久機関と等しい意味で使われているが、当ブログではこのように定義したい。
  1. 必要な時に自由に使えるエネルギー。
  2. 十分な量をいくらでも使えるエネルギー。
  3. 利用コストが実質的に無視できる。

このように考えると、原子力エネルギーはかなり近いが、2.量的にいくらでも使えるという部分がかなり怪しい上、3.の利用コストは極めて高い。地熱利用などは3.の項目さえクリアできれば、将来フリーエネルギーとして使える可能性があるかもしれない。しかし、もっとも現実的なのは一見同意できなさそうだが、太陽エネルギーだろう。地球を閉じた系と考えると熱力学第2法則から言っていずれ濃縮されたエネルギーや資源は底をつき、劣化してゆくが、地球は宇宙から見れば閉じた系ではなく、別の天体から放射されるエネルギー・・・身近な例では太陽エネルギーを利用することが出来る。太陽が持っているエネルギーは明らかに有限だが、人類が使う分には無限と言ってよいだろう。

しかし、3.の利用コストはさておき、1.の「必要な時に自由に使えるエネルギー」の要件を満たしていないと誰しもが思うだろう。そこで2次電池が・・というとあまりにありきたりな議論になってしまうので、あえて別の角度から実現性を考えてみると、地球の表と裏で太陽光発電し、直流送電などのロスの少ない送電方法で送電網を結んでしまえば1.の要件をクリアできそうである。しかし技術的に出来たとしても、地球の表と裏ではどうしても2つの国をまたぐ形になってしまい、国家間の利害が絡み実現性は難しそうである。

また、衛星軌道上や月面で発電して何らかの無線送電で地球に送るという方法が考えられる。経済危機のさなか、各国が月面開発などを宇宙開発を計画しているのは宇宙のロマンを追求するのではなく、超長期的なエネルギー戦略が裏にはあると考えられる。しかしこちらは簡単に兵器として転用できそうであるため、国家間の安全保障の観点から前に進めるのは困難が予想される。

さらにもう一つ大きな問題がある。現時点で最も問題なのがビジネスとしての成立性である。フリーエネルギーなるものの宿命として、自由にいくらでもとなると必然的にエネルギー単価は分母が無限である以上、限りなく0に近くならざるを得ない。そんなものを誰が研究開発するのか?また、そんなものができてしまうと産業界に困る人がたくさん出そうである。つまり現状の資本主義の枠組みの中ではフリーエネルギーは出てきてもらっては困るのである。

さらに、実際に今人類がフリーエネルギー手に入れたとしたらどうなるだろうか?いくらでもエネルギーが使えるわけであるからなるべく価値の高いものを分別なくいくらでも製造しようとするだろう。例えば海水中の金の精錬だとか、自然を大規模に破壊して高価な資源を取り出すことに全力を挙げるだろう。その結末が人類にとって無残なものとなるのは火を見るより明らかだ。

つまり人類がフリーエネルギーを手に入れるためには、テクノロジーの進歩以前に社会的な意味で、以下の点で変わらなければならないだろう。
  • 現状の経済のしくみ・・資本主義とお金のあり方を改める。
  • 競争原理と他者に対する好戦的な態度を改める。
という2つの要件をクリアする必要があるだろう。最近の資本主義の動揺は、人類がより良く生きるシステムを構築するために必然的に起きた試練なのかもしれない。

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